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HIVが完治した人をめぐる話がとても興味深かった

      2015/06/23

たまたま図書館の返却棚(別の図書館に返すまでの一時置き)にあった本が目につき、借りてきて読んだら予想以上にはまりました。

 

完治――HIVに勝利した二人のベルリン患者の物語
ナターリア・ホルト 岩波書店 2015-02-27
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by ヨメレバ

 

HIVに感染し陽性となりながらも、全く別の方法で完治した2人の患者のお話です。

1993年から2013年の間の事実について、書かれています。

 

2人ともベルリン在住の患者だったため、ベルリン患者と呼ばれているとのこと。

 

もちろんこの2人のベルリン患者の治療に関する話なのですが、患者側からの話だけなく医者も研究者も同じように背景や性格などが語られています。

同じ土俵に立っている登場人物という感じ。

 

この本を書いた人はナターリア・ホルトという女性なのですが、もともと医療ジャーナリストでもノンフィクションライターでもありません。学生時代からHIVに関する研究を行っている研究者です。

そして、この方は実験中に、自分のミスでHIVウィルスを自分の身体に入れてしまいます。その後、感染を抑えるための治療をするのですが、その経験がHIVウィルスというモノとして見ていなかった研究対象が、その奥にいるHIV患者という人まで関心を持つようになり、この本を書くことになったようです。

詳しくは、本の冒頭に書いてあり、その臨場感あふれる描写で、一気に物語に引き込まれました。

 

患者も医者も研究者も、それぞれ別個の人間です。それぞれ性格も環境も違う。

そんな当たり前の事を深く感じさせてくれる内容でした。完治した2人の患者も、完治に導く治療をした2人の医者も、ぞれぞれ全く異なる現在を過ごしています。

 

研究をめぐる問題や利益を求める薬剤開発の問題などもさらっとではありますが、書いてあります。

HIVだけでなく多くの医療に関する(もちろん医療以外でも)研究所で、起こっている問題なのでしょう。どんなにすごい発見でも、その分野で名を知られている人の名前が論文に入っていないと、取り合って(信じて)もらえないとかね。

 

ところで、この話は一般的な医学の世界の話です。どんどん詳細を科学的に突き詰めていく現代西洋医学的研究の話です。(一人の患者は、遺伝子治療を行っています。)

 

ところがですね、西洋医学の限界を信じている人にとっては、すごく興味深いんじゃないかなっていうエピソードがあるんです。

 

1人目のベルリン患者の話なんですけど・・・

彼は「HIV感染後、ウィルスを早く強く叩け」という家庭医の考えのもと、厳格な投薬治療を行います。とても真面目な患者で、時間をしっかり守ってちゃんと薬を飲んでいたんですね。

ところが、別の病気になってしまって、HIV治療を行っていた家庭医ではない病院に入院することになります。彼が飲んでいた薬は実験的治療だったため、入院中は薬を飲めません。

そういう中断が、半年の間に2回ありました。

 

そして、彼は薬を飲む時に、いつも薬が自分の体の中でHIVウィルスが洗い流されるイメージを持ちながら飲んでいました。いわゆるイメージ療法ですね。

本の中で、彼はそれが最も大事だと考えている様子が書かれています。

「彼は、科学だけでうまくいくはずがないと思っていた。というより、科学全般を信用しておらず、むしろ薬を飲むときのスピリチュアルな行為のほうを信じていた。思いは実現する。」本文p125

そして、飲み始めてから5ヶ月後のある日、体の中からウィルスが完全になくなったイメージがわいたのです。

それから、1ヶ月後のクリスマスに彼は家族と会って、薬を飲むことをやめる事を決意します。

なぜなら、もう自分の体内にはウィルスがいないと「わかって」いるから。

 

このエピソードは、主に彼がなぜ薬を飲むことをやめたかの理由のために、書かれたものだと思います。

患者本人がそん感じて投薬治療を拒否したので、やめざるを得なかったと。

 

そして、現代医学としては、結果としてこの中断が完治に役立ったのかもしれないと考えて、他の患者で追実験しようと考えるわけです。

しかし、研究者同士のゴタゴタや同じ状況の患者を集めることは難しくて、全く同じ条件で臨床研究をすることはできていません。

投薬中断のタイミングだけ、薬の種類だけ、は同じなどで、研究はしていますが、すべて失敗しています。

 

1人目のベルリン患者が、薬を飲む時にイメージ療法をして、体の中からウィルスがいなくなったと自分で感じたので薬をやめた。

これは、本筋のエピソードではありません。

 

でも!自己治癒力や自然療法を信じている人たちにとっては、すっごく気になるエピソードじゃないかな~と、少々興奮しながら読みました。

 

私自身は、遺伝子治療のような現代医学にも未来は感じているし、同時に今の現代医学では数値化できていないナニカもあるのではないかと思っています。

 

もちろん本筋も興味深く、科学的な話(遺伝子やタンパク質の名前やはたらき)も出てきて難しいっちゃ難しいんですが、そのあたりはなんとなくの理解であきらめつつ、最後まで本当にひきこまれた1冊でした。

 

大勢の人や研究が関わっている話なのでそれが完治症例を中心に1つにまとまることで、わかりやすいんでしょうね。

2名の完治と呼ばれる患者がいるというだけで、まだHIVが完治できるようになったという話ではありません。この2名の患者がなぜ完治したのかの科学的根拠も、まだわかっていません。

 

近い将来、多くの患者さんが完治できる日がくるように、研究者の方々にはがんばってほしいな。そして、お金にならない薬の開発もどうにかできるようになってほしいな。

読み終わって、そう思いました。

 -健康関係本, 読書


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